一幕 まさかの事実

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「ですがここは堅気のお嬢さんが来るとこじゃ ありません。早くお帰り下さい。」 「市松、送って差し上げろ。」 「しかし井熊組には…」 「俺一人で出向く。堅気のお嬢さんに何か あったら赤木組の恥だ、ちゃんと送り届けてくれ。」 それは困る。目立って仕方がない。 「大丈夫です。家、近くですし、自分の身は自分で 守れます。」 「では、さようなら。」 こういう時は逃げるが勝ち。 「ちょ、お待ちを!!!」 後ろでなんか言ってるが聞こえない。 どうせもう会わないんだし。 家までは走れば15分程度。 久しぶりに全力疾走で帰ったらなんと10分で 着いた。疲れたー。 赤木診療所。 このぼろっちい建物が私と祖父の家。 今日は疲れた。さっさと寝よう。 「ただいま…」 この瞬間私は目を疑った。 荒らされた室内に倒れる祖父… 「お祖父ちゃん!!!」 駆け寄ると気づいた脇腹の刺傷。 止まらない出血。 どうすればいい?!どうしたら助けられる? 「と、もえ…」 「喋んないで!!!血が!!!」 「と、もえ…すま、ない。」 急速に下がる体温。振れない脈。 突然の死が私を襲った。 「なにがすまないよ?なんで謝るのよ!!! ねぇ起きて!!!起きてよ!!!」 最後の家族の死… 残された私。 多分、私は祖父の死に対してではなく、一人になる ことへの不安で泣いた。 一人への恐怖。これからへの恐怖。 だけど意外と早くに涙は止まった。 そこからは手早かった。警察への連絡…学校への 連絡…葬儀の用意…。 直ぐに頭で対処してまう自分が居た。 翌日、祖父の死はどうやら何かの事件に巻き 込まれたらしいと言う曖昧な返答が警察から 聞かされた。 事件から二日後祖父の葬儀が執り行われた。 参列者は私だけの筈なのに何故かスーツ姿の男が 二人訪れてくれている。 近づいてみると… 「加佐見さん…?」 と、市松さん。 どうしてここに、と言う私の問いは口にする前に 加佐見さんが口を開いた。 「お話しがあります。組まで来てもらいます。」 固まる私の腕を取り、車へと乗せる。 加佐見さんも乗り込み扉を閉めると一言。 「だせ。」 車が赤木組へ向かうなか私は頭をフル回転させた。 この前何か失礼をしたのだろうか。 半ば逃げたのが悪かったのか…。 それとも手当てを先に施さなかったこと だろうか…。
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