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目が覚めると僕は暗闇の中にいた。
「お目覚めですか?」
周りが見えない。だがこの女性の声には聞き覚えがあった。お母さんを助けてくれ、僕を殺した人物だ。
「僕は死んだのか?」
心に思っていたはずの言葉が声に出て、驚く。今僕はしゃべったのだ。
「驚きました?すごいでしょう」
暗闇で何も見えないのに、彼女がにやりと笑うのがよく見えた。
「あなたの体はもとの体を忠実に再現されていますが、別物です。あなたの体は死んでしまいましたからね。そして条件をのんでくれたことは、とてもうれしく思っております」
「条件って僕が死ぬことだと思ってたんだけど違うのか?」
「ええ、条件はあなたに生まれ変わってもらうことです」
「生まれ変わる?」
「はい。いわゆる異世界といわれるところで人生をやり直してもらうのです。何度も何度も何度でも、です」
「んーまあ、よくわからないけどお母さんが幸せに暮らしてるならよかったのかな」
「とても幸せそうに暮らしていますよ。きっとあなたがいたら悲しんでしまうでしょうから、あなたの記憶をすべて消しまましたけどね」
僕はその言葉を聞いて頭が真っ白になった。お母さんが僕を忘れるはずがない。僕のことを忘れてほしくない。だけど、これでよかったのかもしれない。
「では、新しい世界へお連れしますよ。私は後で向かいます」
「う、うん」
頭が追い付かないまま、あいまいな返事をするとあたりが光に包まれていく。
僕は街の真ん中にいた。どこかわからないまま、一歩足を踏み出した。
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