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高校生活にも慣れてきたころ、いつも道理に家に帰るとお母さんはいなかった。代わりに得体のしれない人がいた。こちらに背を向け、長い髪は白く輝いている。声をかけることはできなくただ突っ立ていると、その人はゆっくりと振り返る。まつげが長く、白い肌に頬だけがうすピンクに染まっている。目は赤く、そのすべてを打ち消すように黒いマントで身体を覆い隠していた。
「初めまして。私はエルヤ=アウノラ。初めましてといっても、私はあなたが小さい時から見ているのですが」
そう言って彼女は笑った。僕の頭は混乱していた。
「今、あなたのお母さんは病院にいますよ。お母さんのお出迎えが無くて寂しいですか?不安ですか?」
「・・・なんで?」もちろん声を出すことはできず、心の中で思ったことだ。
「なぜかって?それは交通事故にあったからです。学校には連絡がいかなかったようですね。ちなみに24時間後に亡くなることが決まっています」
僕は、驚いた。心を読まれたことではなく、お母さんが死ぬことに。彼女の話は不思議と信じ込んでしまう。それが真実だとわかっているようだった。
「私はお母さんを助けることができます。ただ、条件があるのですがね」
にやっといやらしい笑い方をする。
僕は話を聞かずに家を飛びだす。体は強くない。少し走っただけで息を切らしてしまう。だけどお母さんに一刻も早く会いたくて走った。
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