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「やほー。涼さん」
「やほー」
目の前にズサーッとではなく、のそーっと自転車を止めて「よっ」とポーズをとるまーこ。
「お、自転車おニューじゃん」
「でへへ。買っちまいました」
涼さんとまーこは新品のチャリについて盛り上がってて、俺はその輪から外れていた…わけではなく、さっきの質問を思い出して、小っ恥ずかしくなって会話に入れなかったというのが実の所。
ニコニコ笑うまーこの頭にぴょんと跳ねた寝癖を見つけて、思わずドキッとしたわけではない。
なかなか会話に入れなかった俺にふと、まーこは視線をやったかと思うと悪戯に笑った。
その笑顔にハートをばきゅんと貫かれ、息の仕方を一瞬忘れてしまった。
「あはは、マサ、変な顔ー!じゃ、また後で!涼さん、お疲れ様でしたー!」
再び自転車をこぎ出して駐輪場に向かうまーこの後ろ姿を見つめていると、涼さんに肩をポンと叩かれて、やっと息ができた。
「あは、良かったなー。まーこ鈍感で。そいじゃ恋するマサ君、お先にー」
去り際にそう言い残して、手をひらひらさせて帰っていった涼さん。
…なんだよ。全然忘れてないじゃん。
なんて思いながら、まだ熱が残る顔をぶんぶん振って、僅かに残った缶コーヒーに口をつけた。
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