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「お兄さんは俺サマの度を越してるし、美月さんは宮坂さんに頼りすぎ。
それに鈍感だしで、ほんっとイライラします」
瑞希は背を向けていて、表情はわからない。
ただ、不満を並べているわりに、声は穏やかだった。
「あと宮坂さんも。
前も言ったけど、だれにでも優しいなんて、お人よしもいいとこです。
美月さんにもそうだけど、辻みたいなのまで呼び寄せて。
どうしようもない人ですね」
「本当、いやになる」とこぼして、瑞希はまたため息をついた。
浩二はまずいと思った。
こうして言いたいことを並べた後、彼女は姿を消した。
背中がひやりとして、とっさに手を伸ばした時、「けど」と瑞希が言う。
「……けど、本当にいやだけど。
私はやっぱり、あなたが好きなんです。
もう関わらないつもりだったし、忘れようとしたのに、あんなこと言われたら無理じゃないですか。
……だから、もう許してあげます。
そのかわり、私を絶対に幸せにしてくださいね」
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