1683人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉を残して、瑞希はもう一度エレベーターボタンを押した。
(……瑞希)
彼女が中に入ろうとした時、浩二は強く瑞希の肩を引いた。
無理に覗き込んだ目は真っ赤で、浩二は胸が詰まった。
瑞希は一瞬驚いた顔をした後、すぐに目を逸らしてエレベーターに乗り込んだ。
「……乗らないんですか。閉めますよ」
ボタンの前に立ち、眉間にしわを寄せて浩二を睨む。
その様子はふだんの瑞希で、ゆがんだ空気が元に戻ったようだった。
ドアが閉まると、浩二はすぐに隣を見た。
彼女は決して浩二を見ずに、前を向いたままそっけなく言う。
最初のコメントを投稿しよう!