最終章

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彼は瑞希を見て、わずかに表情ををゆるめた。 (どうしてミヤサカが……) 瑞希は思いがけず彼が現れたことに動揺した。 けれどそれより、この場を去らなければという焦りが突き上げる。 瑞希は体をひいた。エレベーターではなく、階段で降りようとしたのだ。 「待って」 ミヤサカが瑞希の右腕をつかむ。重心だけが前に移動して、足が止まった。 「……もう最終上映は終わりましたよ。 こんなところでなにしてるんですか。美月さんの傍にいないといけないでしょう」 瑞希は顔をそむけ、なるべく抑揚ない調子で言う。 だが最後のひとことは余計だったと、言ったあとに激しく後悔した。
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