エピローグ

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渋谷おすすめのランチ情報はたくさんあった。 (蕎麦にしようか……) こう暑いと、喉を通りやすいものが食べたい。 だけどそれは「うんといいもの」の部類から外れている気がして、内心唸る。 そうなるとなにを食べればいいかわからなくなり、どんどん画面をスクロールしていった。 そのうち近くで歓声があがり、あたりがざわめいた。 目を向けると、ハチ公の撮影待ちをしている外国人の集団がはしゃいでいる。 背負っているリュックを叩き合うという、見ているだけで暑苦しいじゃれあいに、瑞希はげんなりしてにスマホに視線を戻した。 それからしばらくして、今度は嬌声のような声があがった。 その声がだんだん近くなる中、ふいに躊躇いがちな声がする。 「瑞希さん」 ざわめきが静まったかのように、ミヤサカの声だけが耳に届いた。 (やっと来た) 瑞希は不覚にもうれしくなってしまった。 そんな自分を抑えて、瑞希はいそいで不満そうな顔をつくる。 そのままゆっくり顔をあげた瞬間、瑞希は目を瞠った。
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