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瑞希の表情を見て、彼は「あぁ」と隠しごとがばれた時のような顔をした。
「この間タクシーで忘れてた雑誌、ちょっと読ませてもらったんだ」
それは予想外の返答だったけど、すぐに腑に落ちた。
居酒屋で結婚情報誌を読みながら、その指輪のページを折っていたからだ。
(ミヤサカめ……)
ふだん鈍いくせに、こういうところがいやになる。
不意打ちは体に毒だと、あとで言い含めておかないと。
「……もう、なんでこんなところで渡すんですか。
場所を考えてくださいよ」
近ごろ泣いてばかりいたせいで、涙腺が緩んでしまったらしく、瑞希は目が熱くなった。
このままだとまずいと、すっと視線を落とした瑞希に、彼の困ったような声がした。
「ごめん。だけど俺がずっと花なんて抱えてたら、怪しいだろ」
「そうかもしれませんけど、みんな見てるじゃないですか」
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