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「……瑞希さんに、言わなきゃいけないことがあるんだ」
かなりの間をおいて絞り出された声は、あまりにも苦悩に満ちた響きだった。
瑞希は反射的に目をつぶる。
聞きたくない。
そんな声で釈明などされて、別れの決意が押し流されでもしたら困る。
瑞希は腕をねじって彼から逃げようとした。だけど力ではかなわず、腕の痛みが増すばかりだった。
「瑞希さん」
彼はもう一度名を呼んだ。その先を聞きたくなくて、さえぎるように言う。
「もういいです。もう済んだことですから」
ミヤサカへの気持ちは消した。少なくとも、自分にも、他人にもそう言い張れるくらいには落ち着いている。
だから早く離してと願った。もう目の前に現れないでとも。
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