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黙っているのが苦しくなったというだけの、空々しい問いだった。
もちろん答えなんていらないし、聞きたくなかった。
彼はさらに苦渋に満ちた顔をし、神妙に「ごめん」と言う。それが返事だった。
(やっぱり……)
期待など一ミリも寄せていなかったのに、瑞希はさっきよりも強く「言わなければよかった」と後悔した。
けれどもう遅く、一旦口にしてしまえば、あとはなし崩しだった。
「やっぱり……。やっぱりそうなんじゃないですか……。
美月さんを放っておけないって言ったのはあなたでしょう。
お兄さんのいうことはなにも間違っていないじゃないですか…!」
あらん限りの力を込め、ミヤサカを見据える。
至極当然のように言った一言が、どれほど瑞希の臓腑をえぐり、致命的な傷を負わせたか。
わかっていない。ミヤサカはなにもわかっていない。
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