最終章

9/16
前へ
/28ページ
次へ
(なんなのよ……) 痛いところをつかれて、瑞希は言い淀んだ。 「違うだろ」と言いたげなミヤサカに、瑞希はぽつりとこぼした。 「……よくそんなことが言えますね」 勝手に心に入り込んで居座っておいて、よく言う。 本当は言われなくてもわかってる。 和明とやり直したとしてもきっと合わないし、結局は同じ場所でつまづいて、傷つけ合うことを。 わかってる。そんなことはとっくにわかっているんだ。 「瑞希さん」 「……仕方ないでしょう。 たとえ私が宮坂さんが好きでも、どうしろっていうの。 美月さんのかわりじゃないって、どうすれば信じられるの」 好きになんてなりたくなかった。好きだなんて言いたくなかった。 彼のスペックだけがほしいままでいられたら、どれだけ楽だっただろう。 「もう他人に心を開いて、傷つきたくないの」 言った途端、瑞希の目に枯れたはずの涙が浮かんだ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1683人が本棚に入れています
本棚に追加