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 あるところにカンタという極悪人がおりました。この世にある罪で犯していない罪がないと言うくらいの極悪人でした。  そんなカンタもついに寿命が尽き、地獄へ堕ちてきました。  カンタは地獄へ着くと閻魔大王さまに会いました。そして、釜茹での刑を受けることになったカンタは、2人の地獄の鬼に連れられて処刑場へやって来ました。  真っ暗闇な地獄で、カンタに見えているのは、目の前でグツグツと煮えている鍋でした。  鍋を見てカンタは、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』というお話を読んだことを思い出しました。  『蜘蛛の糸』と言うのは、地獄に堕ちた悪人が生前、蜘蛛の命を助けたという唯一の善行を理由に、御釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしてその男を救おうとするが、自分だけ助かろうとしてまた地獄へ落ちてしまうというお話です。  自分も生前、1つくらいは善行をしているだろうと思ったカンタは、天国から誰かが助けてくれるだろうと思っていたのです。
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