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「貴方を殺して私も死ぬ」
そう言った私の手には包丁が握られていた。彼への料理を作る為の包丁。その切っ先は、彼に向けている。
本気じゃなかった。私がここまでしたんだから、彼は誠心誠意、私に謝ってくれて、それで仲直り。私達はそれから記念日の続きを楽しみ、次の記念日の為に愛を囁き合う、そうなる筈だった。
「…そうだな。俺達はこのままじゃ幸せになれない。それならいっそ、ここで死んじまうのが一番幸せだな」
悲痛に満ちた顔だった。謝られるよりもツラい。いつも自信に溢れている彼は、どこにもいなかった。そんな顔なんて見たくない。
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