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~Introduction~
暗い……
暗い闇の中で……
少年がすすり泣いている。
ずるずると何かを引きずる音がピタリと止み、代わりに聞こえてきたのは、無慈悲な笑い声だった。
「ククク、何を泣く必要がある?お前を捨てたのはあの女だというのに。まさか母恋しいのか?鏡を見てみるがいい。お前の母が、お前をどれだけ愛していたかが解るだろうさ」
(クククククククククク……)
(ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ)
闇の中に響きわたる哄笑はまるでそれ自体が悪意を持って少年の心を食い散らすようで、彼はただじっと耐えていた。
その瞳に映っているものは何だったのだろう。
顔に伸ばした手が震える。ゆっくりとなぞるその輪郭は闇にまぎれて見えないが、額に指先が触れたとたん彼は絶叫した。
「喚くがいい。怒れ!怨め!それがお前を強くする。いいや、俺が強くしてやろう。お前のその体に秘められし『刻印』の力を、引き出してやる!ククク……ハハハハハ!!」
闇の中で、男の哄笑と少年の絶叫が交じり合い、溶け合う。
残響の中に悪意だけが残った。
『刻印』
~War of Returlvannia~
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