運命の一夜

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あまりの出来事に一瞬の間をおいて、ユリアンの顔が引きつる。   「父上!何故その様な物を私にくださるのですか?」 驚くユリアンを可笑しそうに見つめる公爵は、まるでいたずらを思い付いた悪童の様な顔をしている。   「そろそろ儂も歳寄った。このところは楽隠居の夢ばかり見るでな、お前を跡取りにすると決めたらなおの事その思いが強くなった。ならばいっそ後の事はお前に全て任せようと思うてな」   「そ、そんな!?僕はまつりごとなど全く無知もいいところですよ!そんな無茶な」   カカカと楽しげに公爵は笑う。クラトも知らなかったらしく、興味深げに成り行きを見守っている。   「まあそんなに怒るな。もちろん一人では難しかろう、そこでクラトを付けてやる。彼を参謀にして相談しながらやると良い。クラトも表舞台に立つ良い機会だ」   慌てたのはクラトだった。思わず公爵ににじり寄ると、懇願する。   「何をおっしゃるのです公爵様!?それは困ります。私は表舞台に立ちたいとは露ほども思っておりませぬ!それに、私には影幌旅団もございます。どうかお考え直しを!」   ユリアンはあまりの成り行きについていけず、二人の様子をただ眺めるしか出来ない。 それは冗談にしても度が過ぎる話だった。
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