喪失の夜明け

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カイトが慎重に玄関扉の脇に背をつけて立ち、勢いよく開けて素早く壁に身を隠す。 しばし様子を見て反対側の壁からアレンがそっと覗き見る。 「!!!」   アレンは驚いた様子で慌てて顔を背けた。   「どうした?何があるんだ?」   カイトが不審気に素早く中を覗く。   「これは!?……ひでぇ……」   ロビーにはすでに乾いているおびただしい血痕と、無数の死体、そして思わず吐き気をもよおすほど立ち込める異臭があった。   「なんてこった……」   ルッツとテトも、中の様子を見て青ざめながら地面に胃液を撒き散らしている。   「ユリアンの姿は見えない……公爵様もだ。もっと奥を探そう」   アレン達は急いで、しかし慎重に屋敷の中を調べて回る。 一階ほどではなかったが、二階にも遺体が幾つも転がっていた。 西側の階段へ差し掛かった時、マイヤ女官長の姿を見つけて彼らは軽く手を合わせて冥福を祈った。   名物女官長だったが、みんな彼女の事が好きだった。   館内を一通り見て回ったが、ユリアンの姿もマリオン公爵の姿も見つける事が出来なかった。   「いったいどこに消えたんだ?」 アレン達は訳も解らず不安になっていた。
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