喪失の夜明け

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アレンはクラトと面識がある。 というよりも、彼はユリアンと共にクラトの教えを受けていたのだ。 平民のアレンが貴族と共に学ぶ。しかも教えるのは商人(実際は違ったが)というのは、このナルヴァだからこそ可能だった。   「ア、アレン君か……?無事だったんだな……村は?」   苦しげに青ざめた顔で問う師に対し、アレンも絶望の表情で首を振って答えた。   「……そうか」   クラトはしんどそうに水たまりを避けてあずま屋の壁にもたれながら腰を下ろす。   「先生、ユリアンはどうしたんです?探したけど姿が見えない。公爵様もです」   アレンがじれったそうに聞くと、クラトは顎をしゃくってあずま屋の奥を指した。   「二人とも中に居る」   ルッツ達に師の手当てを任せると、アレンはカイトと共に急いで中に入った。 湿った土の匂いのする中に、奥まった所に干し草の束が積んである。   その中の一つをバラしたのだろう、藁が地面に敷き詰められている一角があった。   そこに寝ている二人の姿を見つけ、そっと近づく。   恐る恐る覗き込んだ公爵の顔は土色に変わり、胸には固まってしまったおびただしい血糊が付いていた。   「ひっ!!……し、死んでる!?」
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