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そこには昨夜ユリアンが倒れていたはずだが、今は姿が見えない。
そんな事は知る由もないアレン達は、雨上がりであまり足場の良くない斜面をゆっくり上がっていく。
徒歩で登って行く彼らにとって幸運がもたらされたのは、中腹の大陥穴から幾らも歩かない内だった。
昨夜の死闘の時に逃がした馬を、三頭見つける事が出来たからだ。
彼らは何事もなかったかのように、雨上がりの瑞々しい草を食べている。
驚かさないようにそっと近付いて手綱を取ると、意外に従順にアレン達に従った。
残りの道程は、足元に気を付けながらではあるが騎乗して進む事が出来た。
遠目には全く異常を感じさせなかった館の門前まで近付いて、アレン達はやはり愕然とする。
前庭から入り口の扉にかけて、賊や使用人の亡骸が転がっていた。
「やっぱここもやられてたな」
カイトが左頬の傷に掛かる髪を慎重に耳にかき上げながら、鼻にシワを寄せて言った。
アレンは逸る気持ちを抑えながら、万一の為に持ってきた敵の刀を握りしめて皆を促す。
「中を調べよう、みんなも油断するなよ。まだ奴らの残党が居ないとも限らんからな」
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