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日が暮れようとしていた。
三つの人馬の影が街道に長く延びている。
近くには民家の姿一つ無く、影達は道を外れて野宿の準備に取りかかり始めた様子だ。
それは言うまでもなく、ユリアン達一行である。
カイトとは昼過ぎにカレントへ向かう岐路で道別れた。
ユリアン達もひたすら街道をマルリオンへと上っていたのだが、このまま先を急いでも後半日は進まないと途中の宿場町には辿り着けない。
怪我人のクラトを連れては、いかに急ぎの道中でもこれ以上の無理は出来かねた。
「この辺は平野だからそれ程危険な獣も出ないけど、明かりは絶やさねぇ方がいい。俺は少し日が落ちてしまう前に薪や柴を探して来ます」
アレンはそう言うと林の方へと姿を消していく。
ユリアンは一瞬ためらったが、クラトの苦しげな顔色を見て木陰にマントを広げた。
大分暑い季節が近づいて来たとはいえ、まだ朝夕は少しばかり冷え込む。
「クラト、少し横になるといいよ。まだ先は長いんだろう?体力を残しておかないと」
ユリアンはクラトを先生と呼ぶのを止めた。
クラト自身が強く拒絶したからだ。
「ユリアン様は私の主人です。ましてこれから公爵位に就かねばならぬ御身、臣下の示しがつきませぬ」というのがクラトの断固たる言い分だった。
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