流浪の王女

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それは二十騎ばかりの騎馬のようだった。   手に掲げた松明が炎の列を作ってゆっくりと進んでいた様だったが、こちらの焚き火に気付いたのか進路を街道から僅かにそれて速度を速め明らかにこちらに向かって来るようだ。   ユリアン達に緊張の色が走った。   サイールは早々と剣を抜き構えている。   クラトも目を細めて敵か味方かを判別しようとしながらも後ろ手に主人を庇うようにしながら、焚き火を消そうか一瞬躊躇したが、思い直した。   どちらにせよもう見つかっているのだ、まして隠れる物さえ無い平野では大した意味はない。   アレンもユリアンもシュアンもそれぞれに臨戦態勢をとりながら、いつの間にか馬車を繋いだ低木を中心に半円を描くように固まっていった。     どんどん近付いて来る騎馬隊の、手にした松明におぼろに照らされた姿は恐怖感さえ感じさせたが、近づくにつれクラトにはある疑問が胸に湧いてくる。   それは直ぐに確信へと変わった。 騎馬隊の先頭の騎手が手にした松明を二回ぐるりと回して、中心に十字を切る仕草をしたのだ。     「大丈夫!味方だ!!」   クラトは皆に向き直り笑顔を見せた。   「あれは我ら旅団の合図だよ、彼らは味方だ」
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