流浪の王女

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クラトは焚き火にくべられた薪を引き抜くと、合図を返した。   騎馬隊の方もそれを見て安堵する様子が見える。   もう顔がうっすらと松明に照らされて視認出来る程に近付いて来ている。   先頭の大柄な男の隣には見慣れた青髪のカイトの姿も見えた。   「先ほどの合図は影幌旅団の暗号なのですよ。二重丸は盾を表し、十字は剣を表してます。それに対して私が返した合図はマール公家の略式紋です。旅団の全てはマール公家の為に、と言う意味ですよ」   クラトが説明する。 その前へ、先頭の騎手が大きな体躯に似合わず軽やかに下馬して挨拶を交わした。   その隣にカイトもまた馬から降りてアレンとユリアンに歩み寄った。   「いよっ!意外と早かったろ?」   カイトがアレンにニヤリと笑う。   「お帰り、カイト。ほんとに早かったんだね、ウルカン関で合流とばかり思ってたけど後ろから追いかけて来たの?」   ユリアンもカイトを労いながら、疑問を投げかける。   確かにカレントへの分岐点で打ち合わせた時は、カイトは旅団を連れて迂回路からウルカン関へ向かう予定になっていたのに、彼らはプタル方面から現れたのだ。   それはクラトも予定外の事だった。     「ぅおっほん!その者らは何者じゃ?」   シュアンがまたもうろん気な目をこちらに向けて値踏みするように部隊を眺め回している。
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