憂囚のマルリオン

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マルリオン宮殿の大広間では、まるで潮騒のように途切れる事無くざわめきが続いている。 時折、老貴族の「まさか!」という驚愕を押し殺した声や貴婦人の控えめな叫び声、果てはすすり泣きの声まで聞こえてきたが、皆が誰も注意した訳では無いのに声を潜めて囁き合っていた。   宮殿の中には実に様々な服装をした貴人に溢れている。   貴族の平服をそのままに駆けつけた紳士や、この様な際なのに派手に着飾った熟年の婦人。 青い帽子をかぶった財務官僚に、軽装鎧の騎士団の面々も居並んでいる。   「馬鹿な!!」   その中で一際大きな声が響いた。 騎士団の隊長の証である胸章を付けた若者が数人の仲間と言い合っていた。   シッ!と周りにいた高齢の貴族にたしなめられる。   一瞬静かになったが、すぐまた小声でコソコソと話出した。   「マリオン様はナルヴァの離宮には静養に行かれたのだぞ?年に何度か行かれる事は父上に聞いた事がある。しかしナルヴァは何にもない田舎だ、そんな所に何故軍隊なんかが現れる?」   別の青年がそれに答える。   「そんな事知らんさ!しかし侯爵様がナルヴァで謎の軍隊に襲撃されて討ち死になされたというのは確からしい」   「ナルヴァは国境線に近いとはいえ、国境警備隊が破られたという報告は無いぞ?それに隣接してるのはイシュルトのユイマールだ。ユイマール候はファリアの姫を娶ってる位に親ファリア家なのだから、攻め込むなんて有り得ない!」
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