流浪の王女

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ユリアン一行は、少し小高くなっている所に生える低木に馬車を繋ぎ、まだ少し早かったがテントを広げて野営の準備に掛かった。   黒装束の男達は、あれほど激しく互いに切り結んでいたにも関わらず殆ど死人が出ることもなく、今は互いに手当てをしあっている。   (なんと言うか……激しい人達だな……。イシュタニア人は皆そうなのか?)   ユリアンは一人愛馬に草を食べさせながらプタルの方を見やる。     サイール達が強奪した金品は、配下の者の手によってプタルの行政官の元へ運ばれている。   じきに街はその話題でもちきりになるだろう。 鍛冶屋の親父が大喜びして話に夢中になるに違いない。   ユリアンはそう考えると、自然に笑みがこぼれた。   「何をニヤケておる?どうせ女人の事でも考えているのであろう、道楽貴族が」   いつの間にか隣に来ていたシュアンが、叱責するような口調でユリアンに問うた。   「王女は真っ直ぐな方だね。それに優しい。奪われた者達の事を心配してるのでしょう?」   ユリアンは気にした風でもなく微笑みながらシュアンに返す。   シュアンはパッと顔を朱に染めたが、慌てて怒鳴り返した。   「ば、馬鹿を言うな!!私はただ、余所者の金なんぞで祖国を取り返した所で嬉しくないだけじゃ!!」   あまりに大声で怒鳴ったので、テントの準備をしているアレンやサイールがこちらを振り返っている。 しかし、ユリアンが笑っているのを見てまた作業に戻った。
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