憂囚のマルリオン

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「もちろんユイマール候は親ファリア家だとも!だから『謎の軍』と言ったろ?国籍も所属も不明。イシュルトが戦争ふっかけた訳じゃない。しかし恐ろしく残忍な奴らだよ。離宮はおろか村の老人赤子にいたるまで殺された挙げ句全て焼き払われたそうだ」   友人の言葉に栗色の長髪の青年は眉をひそめた。   「なんと非道な…それにしてもお前どこでそんな情報を?ヤケに詳しいな」   気付けば周囲に居た貴族連中も二人のやり取りに聞き耳を立てている。   先ほど注意してきた老紳士も一緒に耳をそばだてていたので、青年は一瞬吹き出しそうになったがすぐにまた真剣な顔つきに戻った。 「俺はたまたまアリオン様に定期報告をしに公爵代理の執務室へ行ったんだよ。そしたら影幌旅団って奴の使者を名乗る男が現れてナルヴァの変事の報告と公爵様討ち死にの知らせを持って来たって訳。俺は話の途中で放り出されたけどな」   恐らく放り出されても扉に張り付いてしっかり聞き耳を立てていたに違いない。 その姿を想像すると可笑しかったが、栗毛の青年は彼の報告に強く惹き付けられ、頭の中を様々な憶測が飛び交っていた。 「影幌旅団?聞いた事があるぞ……マリオン公が情報収集や工作をする為に作られた忍び集団。確か父上がそんな事を言って……!?父上が来たぞ!静かに!」   彼がそう言うと、大広間に入って来たのはアリオン侯爵であった。   栗毛の青年はマール公騎士団部隊長であり、アリオン侯爵の子息アルシウス子爵である。
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