憂囚のマルリオン

7/20
前へ
/34ページ
次へ
大広間に現れたマール公代理アリオン候爵は、厳しい表情のまま大広間の一番奥、執務官によって用意されていた壇上に登った。   一同が息を飲んで候の言葉を待つ中、アルシウスの顔を見つけてアリオンは一瞬苦い顔をする。   アルシウスもまるで叱られでもしたかの様に首を縮めたが、父がそれ以上気に留めた様子も無いのでまた身を乗り出して成り行きを見守っている。   アリオンは静かに咳払いをすると、一言一言ゆっくりと言い聞かせるように話し出した。     「皆がどこから噂を聞きつけたかは詮索せぬ事にする。折りよくこうして集まられたからには緊急召集する必要も省けた。先日我らが主、マリオン公爵がナルヴァの離宮に静養の為数日間の日程で赴かれた事は諸侯にも聞き及んでおろう。その日程がどの様にずれ込んだのか、二日前にはお戻りになる予定が未だお帰りにならぬ事も、皆が知っての通りだ」   アリオンはそこで一旦呼吸を置いて皆の反応を確かめる。   どよめきが静かに広がって行くのを落ち着くまで見守ると、またゆっくりと言葉を継いだ。   「昨日の午後、待ちに待っていた殿の消息を知らせる者が現れた。しかし、あまりに衝撃的な内容であるので、その者の身元を確かめる為に少々の時間を要した。諸侯には報告が遅れた事をまずは詫びねばならぬ」   広間には緊迫感が漂い、皆が息苦しそうにしている。   まるで、悪い予感に大広間中が満たされてしまい、呼吸困難に陥ってしまっているように見えた。   静かにアリオンは主に訪れた運命を告げた。   「我らが主、マール公爵マリオン殿はナルヴァに突如現れた所属不明の軍の手にかかり……討ち死になされた」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加