憂囚のマルリオン

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クラトは少し疲れた顔をしながらも、ユリアンに心配をかけまいと努めて笑顔で答えた。   「いえ、もう暫くかかるようなので一刻の休憩に入ったところですよ」   もう暫くかかる、と言って既に二日間この部屋に軟禁状態になっている。   顔にこそ出さないが、ユリアンも相当に鬱屈していた。   クラトはユリアンにすまなそうな顔をしながら更に言葉を継いだ。   「なかなか皆様慎重論を唱える方が多くて、一筋縄では行きませんね。まして今回は幾つかの議論を同時に行っていますので、遅々として進みません」     ユリアンは少しがっかりした顔だったが、すぐに気を取り直してクラトに質問した。   「シュアン王女はどうしてるの?確か初めの話では会議に参加していると聞いたけど。それにアレンやカイトは?」   クラトはシュアンの名を聞いて思わず苦笑いする。 彼女は会議の初日に煮え切らないマルリオン宮殿の大人達を面と向かって罵倒して出て行ってしまったのだ。   クラトとサイールの二人がかりでなんとか説得したが、そのまま単身ファリア大公の元へと馬を飛ばさんばかりの勢いだった。   結局、会議の結論が出るまでマルリオンに止まる事にはなったが、会議にはそれ以来出ていない。 あてがわれた部屋に居る筈だが、勿論大人しく待ってなどいないだろう。   「きっと飛び出して街をうろついてるんだろうね。喧嘩なんかしてなきゃいいけど」   話を聞いてユリアンは笑った。
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