流浪の王女

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「では、纏めるとイシュルトは十日程前に謎の軍勢に首都を奪われ、現在は王弟リシュウ閣下がその軍門下において王権を行使していると?」   クラトがサイールに質問を繰り返している間、シュアン王女は驚くべき速度で食事を平らげている。   旅路の途中の事で大した物は無かったが、あっという間にパンや干し肉、乾果などを胃袋に流し込んだ。   ユリアンはなにくれと王女の世話を焼いている。   干し肉が喉に詰まってむせかえったら水を取ってやり、食べ物が無くなってしまうと自分の分も分け与えた。   アレンは苦々しそう鼻の上にしわを作って見ていたが、サイールのもたらした驚くべき情報に、息を詰めて成り行きを見守っている。   「そうだ。腹が煮えて適わんが、簡単に言えばその通りだ。そして今、我々反対勢力が力を尽くして王都及び陛下の身柄奪回の為に奔走して居る」   それを聞いた瞬間、干し肉を引きちぎろうとしていた王女の手が止まった。   その身分に似合わず品のない仕草で指の脂を舐めながら、吐き捨てるように言葉を投げる。   「何が反対勢力じゃ!元暗殺師団の僅かな郎党のみで、やってる事はただの盗賊ではないか。その様なこそ泥程度の反乱分子に国を覆す如何なる力があると思っている!?」   サイールは返答に詰まった。 悔しいが王女の言葉に反論するだけの根拠となるものは何一つ無い。   「まあそれは一旦置いておきましょう。それで王女殿下はファリア大公に目通り叶ったとして、出軍を要請されるおつもりですか?」   クラトは主題が逸れそうになっている話を本題に引き戻す。   サイールをはじめ、ユリアンもアレンも、そしてクラトも皆でシュアンに注視した。
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