流浪の王女

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シュアン王女は皆の注視もどこ吹く風と残りの干し肉を頬張って、しばらく咀嚼するのに躍起になっていたが、音を鳴らして飲み下すとやっと一息ついたのか、水を飲み干してからプハッと口を拭った。   「ファリアにはあの様な魔道に対抗する術があるのか?もし在るとしてもこの様な状況にあって、ファリア一国では大した数の軍兵は出せぬであろうが」   挑むようにクラトを睨み付けて彼女は決め付けた。   クラトはチラリとユリアンに目を向けてシュアンに答える。  ユリアンは何事かを考えて僅かにブルッと身じろぎした。   「まあ、恐らくは殿下の仰る通りさほどの軍は裂けぬでしょう。今の所、その魔道とやらにも対抗する術など無いようですし。では何を求めてファリアへ?」   クラトは目顔でユリアンを制しながら問い掛ける。   まさかここにも魔道を使える者が居るとは言えない。   ましてユリアンは自分でコントロール出来ないのだ、当てにされても困る上に下手をしたらその軍勢がファリアの差し金と疑われかねない。     そのようなクラト達の心配をよそに、シュアンはその場の皆に知らしめるかのように、やけにきっぱりとした口調で宣言した。   「今、私は寄る辺ない流浪の身だ。祖国は叔父上に事実上簒奪された。私はこれからファリア大公の元へ身を寄せ、彼を後見にリトゥルヴァニア評議会へ図り、連合軍の出動を要請する。これはただイシュルトの為ならず!!リトゥルヴァニア島全土、引いてはガレリア大陸に及ぶ火急の事態なのだ!!」
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