流浪の王女

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みな虚を突かれたように静まり返った。   それはある意味、思いもよらぬ奇策である。   三十年前、リトゥルヴァニア島全土を巻き込んだいわゆる『三年戦争』で、泥沼の戦況に疲弊していく島の状況を見かねた大陸の強国、ヴァルト公国が軍事介入を行った。 その際に当時争っていた三国の均衡を保つ為、ヴァルト公国直轄の領事府を設置し、各国から選任された代表者で構成するのが連邦評議会である。   徐々に形骸化の一途をたどっており、実権など何も持たぬ組織に成り下がっているのは、大陸の影響力が低下しているのが一番の原因と言えた。 どちらにしても頼る程の力は無いように思える。   とはいえ、いかに形ばかりと言えども評議会が三国に渡る関税や国境緩衝地帯での事業や通行許可を司っているのは間違いないし、有事の際の調停役機関という立場である。   評議会にて可決されれば各国は拒否出来ない。   「しかし、それは賭けですね。可決されれば確かに連合軍が結成出来ますが、ウィルベニアが動くかどうか……。場合によっては否決へ持っていく為に策動するかも知れませんよ」   クラトが考え込みながら言葉を発した。   それにシュアンは強い口調で返した。   「それは覚悟の上だ!しかし私が思うにあの軍勢は禁術の力を持って更に勢力拡大を図るぞ。各国が得手勝手に動いてはきゃつ等の思う壷じゃ!!」
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