流浪の王女

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目に爛々と使命の炎を燃やし、クラトを突き抜け、はるか世界を睨み付けるような王女の眼差しは、とても14歳の少女のものとは思えない。   (この方もこの方で、大変な使命を背負った運命の子なのかも知れない……)   クラトは心の底で、この出会いこそがユリアンとシュアン、そしてリトゥルヴァニアの運命なのかも知れぬと思った。   辺りはいつの間にか夕闇に落ち暮れて、随分近付いてその姿を明らかにしているユルガン連山の後ろの空を紫に染めている。   アレンがおこした焚き火の火影が、余計にシュアンの横顔を大人びて見せた。   クラトはふっと優しげな笑みを浮かべてシュアンに語りかける。   「そういう事なら、私達はなかなか殿下のお力になる事が出来ると思いますよ」   シュアンの表情がパッと明るくなる。 そうするとやはり年相応に幼く見えた。   「実はこちらにおられるユリアン様は、先代マール公マリオン様より家督を継がれた現在のマール公爵家当主であらせます」   シュアンとサイールが思わず顔を見合わせるのを面白そうに見つめながらクラトは続ける。   「マール公家はリトゥルヴァニア評議会ファリア代表を勤めておりますれば、大公のお許しさえ出ればファリアの票は既に手に入ったと同じ。どうやら私達も、その謎の軍勢の敵であるようです」
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