流浪の王女

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「あ奴らの敵じゃと?それに評議会メンバーのマリオン殿の名は聞き及んでおるが、引退したなどとは知らぬな」   シュアン王女はうろん気な目をユリアンへ向けていかにも怪しいと言いたげな口調で質した。   「それは──」   クラトが答えようとするのを手を差し伸ばしてユリアンが制する。   「……僕が答えるよ。マール公家当主であり僕の養父でもあるマリオン公爵は、ナルヴァにある離宮を訪問した際に突如現れた謎の一軍に襲われ討ち死になされた。……僕の成人を祝うために訪れて、僕を守るために剣を失って、背中から一突きされてね。最後は僕の名を、声にならぬまま呼んで息を引き取られた」   とつとつと語るユリアンの静かな迫力に気圧され、シュアンもサイールも息をのむ。   「亡くなられる少し前に、父さんは僕に後事を託されたんだ。僕と、このクラトにね。今思えば、父さんはこういう運命になる事をあらかじめ覚悟されていたのかも知れないね」   そう言って真っ直ぐクラトを見つめる。 まるで言葉にせずとも(本当はクラトもその事を知ってたんじゃないの?)と尋ねているようで、クラトは思わず目を伏せた。   「その相手が、イシュルトを襲った連中だと?」   サイールが疑い深く質問する。   「ええ、状況や特徴、またタイミングからみて恐らくは間違いないでしょうね」
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