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輝く夜空。月がないから、余計に煌めいて見えた。
「どうしても、出ていくの?」
俺を呼びとめる少女がいた。とても辛そうな顔をしていて、どこか悲しげにも見える。
「ああ、ここじゃあ俺は落ちこぼれだしな。だから城の兵士にでもなって、困らない生活でも送ってみせるよ」
「でも、魔法が使えなくても十分に強いじゃない。だから――」
「村で一番強いお前に、俺は一度も勝ったことがないんだぞ? それにお前より弱い奴に負けた。だったら約束通りに出ていくしかないじゃないか」
風が草を撫でていく。同じように少女、フィーネの茶髪もなびかせた。
この世界じゃあ魔法の才能が全てにおいて優劣を決める。だから魔法が使えない俺は、落ちこぼれでしかなかった。
「あれは、彼が卑怯な手を使ったから。それを証明すれば……」
「それでも俺の負けは変わらないさ」
切り捨てるような言葉に、フィーネは押し黙った。
わかっているはずだ。どんなに声を上げても決議は変わらないことを。
「じゃあな。お前も大変だろうけど、頑張れよ」
もう二度と戻らない村。フィーネにも顔を会わせることはないだろう。
そう思っていると、突然「バカ!」とフィーネは叫んだ。
「なんでそうカッコつけるの? ホントは村で一番強いでしょ!? 私、そういう所が大っ嫌いよ!」
振り返るとフィーネは泣いていた。だけど怒ってもいて、かわいい顔がとんでもなくグチャグチャになっている。
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