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「そんなことないって。俺は一番の落ちこぼれだ」
「なら、それを証明しなさいよ!」
フィーネは叫ぶと共に魔法を発動させた。
いや、単なる魔力の塊と言えばいいだろうか。見ただけでそれがどれほどの規模なのかわかってしまう。
「ちょ、ちょっと待て! こんな所でそんなものを爆発させたら――」
「何もかも吹っ飛べばいいのよ! もう知らない!」
どうやら本気のようだ。このままではまずい。
俺は持っていた剣を抜く。そして宙に漂っている魔力へ向かって駆けた。
できるなら使いたくなかった刃を、その魔力へと突きつけた。
「なら、こんなわざとらしいことをするんじゃねぇ!」
魔力の塊を斬る。途端にそれは刀身へと引き寄せられていった。
徐々に、徐々にだけど魔力は吸い込まれていき、数秒後には完全に消え去る。
「ったく、魔剣を抜かせるんじゃないっての」
そんなことを口にした瞬間、フィーネは俺に抱きついた。
俺は思いもしないことに、ただ驚くしかない。
「私に勝ったでしょ? だから、行かないで」
切実な願い。それはしっかりと感じ取ることができた。
でも、これは俺の力じゃない。だから俺がフィーネに勝った訳じゃない。
「ごめんな」
優しく腕を解いた。フィーネは、とても悲しげな顔をして俺を見つめる。
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