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「なんで?」
「悪いな。でも、いつか迎えに来てやるよ」
簡単な嘘だ。だけどフィーネは、どこか不満げにしながら訊ねた。
「いつかって、いつ?」
「死ぬまでには、かな?」
フィーネはちょっとだけ悔しそうに、でもこんな言葉をかけてくれた。
「じゃあ、必ず迎えに来てね。信じているから」
一番困る返答に、俺は苦笑いするしかなかった。
魔法が使えないこの世界じゃあ、俺は落ちこぼれだ。だけどフィーネは村で一番の才能がある。もしかしたら世界で一番かもしれない。
だから魔剣なしでは、どうしようもない相手でもある。
「約束か」
この旅は、そんな女の子から逃げるために始めたもの。
だけどそれは、いつか叶えなきゃならない約束のために終わらせなきゃならない。
だから誓おう。約束を叶えるために、必ず帰ってくるってことを。
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