掃除人と深紅の決意

5/9
前へ
/9ページ
次へ
 それを思った瞬間、鋭い破裂音とともにガクンッと右足から力が抜けた。  再び柱の陰に身を投げ入れるように倒れ込む。  足を引きずって座り込むと、コンクリートの床の上にズルリと朱色の線が走った。  着弾した衝撃はなかったから、おそらくかすっただけで済んだのだろう。 「─── っ!!」  この足ではもう走り回ることなどできない。  立ち上がるのでやっとだ。  敵は決して綾を殺すまで諦めてはくれないだろう。  冷静に距離を詰める足音が聞こえてくる。  ……今の爆発で、何人片付いた?  手が震えているのは、出血の衝撃のせいだ。  決して恐怖からではない。  そう必至に言い聞かせて、拳銃を両手で握りしめる。 「……死にたくない」  人を殺すことは怖い。  だけどそれ以上に、自分が死ぬことが怖い。  我ながら最低だとは思っている。  だけどそれが偽らざる綾の本音で、少なくとも綾の隣には、そんな綾の本音を肯定してくれる人がいた。 「死にたくないよ、たっちゃん……っ!!」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加