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それを思った瞬間、鋭い破裂音とともにガクンッと右足から力が抜けた。
再び柱の陰に身を投げ入れるように倒れ込む。
足を引きずって座り込むと、コンクリートの床の上にズルリと朱色の線が走った。
着弾した衝撃はなかったから、おそらくかすっただけで済んだのだろう。
「─── っ!!」
この足ではもう走り回ることなどできない。
立ち上がるのでやっとだ。
敵は決して綾を殺すまで諦めてはくれないだろう。
冷静に距離を詰める足音が聞こえてくる。
……今の爆発で、何人片付いた?
手が震えているのは、出血の衝撃のせいだ。
決して恐怖からではない。
そう必至に言い聞かせて、拳銃を両手で握りしめる。
「……死にたくない」
人を殺すことは怖い。
だけどそれ以上に、自分が死ぬことが怖い。
我ながら最低だとは思っている。
だけどそれが偽らざる綾の本音で、少なくとも綾の隣には、そんな綾の本音を肯定してくれる人がいた。
「死にたくないよ、たっちゃん……っ!!」
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