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……そう、私は
その光景を改めて焼き付けた綾は、全身が震えていることに気付いた。
……たっちゃんの到着があと1分でも遅れていたら、死んでいたんだ
そう思うのと同時に、龍樹の体も震えていることに気付く。
これだけ圧倒的な戦闘能力を見せ付けて、全ての危難を打ち破ってみせた龍樹が。
ああ、死ねないな。
その理由が分かってしまうから、より一層そう思う。
圧倒的な力を持つ彼が、何に恐怖しているのか分かってしまうから。
……私一人がどうなったって、遠宮龍樹は変わりようがないっていうのに
そう、周囲に思わせなければいけないのだ。
それが、龍樹に命を助けてもらった綾にできる、唯一の恩返し。
何も知らないフリをして、能天気に笑って、龍樹に呆れられてからかわれてプーッとふくれっ面をさらして。
それをいつもお決まりの動作でパチンッと潰しにくる龍樹が、どれだけ安らいだ笑顔を見せるか、綾だけが知っているから。
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