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眼前のディスプレイに浮き上がる青い星に、勇人は大きなため息をついた。
目的地である『鏡惑星』到着を明日に控えての親友の死に、大きなショックを受けていた。
十年前、地球型惑星探査の国際プロジェクトは、地球から二千光年離れた場所に地球とよく似た特徴を持つ惑星を発見した。
その惑星は、太陽に良く似た恒星の周囲を360日周期で公転し、25時間周期で自転する。ただし、公転・自転の回転方向が地球とは逆さのため、『鏡惑星』と名付けられた。
発見から五年後、鏡惑星を有人探査するため超高速宇宙船『タキオン』が開発され、七人の宇宙飛行士が地球を出発した。
鏡惑星まであと一日と迫った今、生き残った宇宙飛行士は勇人とイブの二人だけとなった。
この呪われた旅路の犠牲者の数は、尋常ではないと勇人は思った。
マークが死んだ夜。
勇人はイブの個室に呼び出された。
二人はこのミッションでは同じパイロットとして参加していた。
七人がメンバーに選ばれた時、ブロンドの長い髪を首筋で束ね律動的にきびきびと動く紅一点の彼女に、勇人は好感以上のものを抱いていた。
しかし、この旅の途中、イブの夜の奔放さが目に余るようになった。
毎晩男性クルーとベッドを共にしていた。
それだけならまだ良かったが、イブは一年経つと付き合った男を捨てて次の男に鞍替えした。そして、捨てられた男は例外なく非業の最期を遂げるのだ。
地球を出発してから丸五年、マークを含めて既に五人の男が死亡した。
生き残った男は自分しかいない。
勇人とイブはパイロットとして交代でコックピットに詰めるため、これまで二人揃って休みを取ることはなかった。
勇人は、不吉な死の影をまとうイブとはなるべく距離を置くようにしていた。
しかし、今夜ついにイブから声が掛かった。
イブの個室の扉をノックすると、「どうぞ」と中から声がした。
扉を開けると、暗闇に薄っすらとオレンジ色のライトが灯り、一糸まとわぬ姿でイブが立っていた。
勇人はイブをベッドに誘うと何度も愛撫した。
情事の後、イブが隣ですやすやと眠りにつくと、勇人はベッドから抜け出した。
「すまない。」
勇人は上着のポケットからレーザーガンを取り出すと、寝ているイブの口に銃口を押し込み、躊躇なく引き金を引いた。
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