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「はっはっ。もう少しで終わりだ」
心地よい風が周りの景色と同じように流れていく。
終点である公園に着くと彼、橋本龍也(はしもとたつや)はその場で座りこんだ。
「はぁはぁ……ふぅ。大分呼吸を整えた。早くあれもやらないとな。」
拳を握った手を素早く前に出す。足も同様に腕と順番にこの作業を行っていく。
そう。彼は、独学で空手の鍛錬を行っているのだ。大切な人を守る為に……。
自分が小学3年生の時だった。俺が小学生に上がる前に家を出てった父の代わりに母は毎日俺と弟を食わす為に死ぬほど仕事をしていた。
暮らしが貧乏でも俺たちは構わなかった。
俺たちの為に働いていた母の気持ちが嬉しかったし、笑顔が絶えない家だったから。いつか恩返ししようって俺達は決めていた。
しかし、その願いは一生叶わない物になった。
母は死んだのだ。
原因は、仕事のし過ぎによる過労死。
最後に母の姿を見て俺はこう考えた。もう恩返しする事は出来ないけど、大切な家族を守る為に俺は頑張るって。だから、安らかに眠りなよという思いを抱いて。
そう決意し見送ってから月日が経ち、俺は高校2年生となり今の自分あるのだ。
「ん?げっ!!もうこんな時間だ。早く帰って一也(かずや)を起こさないと俺たち遅○×△……う~!」
最後らへんは何を言っているか分からない状態の中、もうスピードで我が家に走って行った。
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