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「このあとこの話がどうなるか、わたしはもう知らない方がいいのかな」
彼はちらっとわたしを見て、僅かに頷いた。
「…そうだな。証拠が揃ったから、今後はこちらの手の内を少しずつ見せながらの交渉になっていくだろうから。思うような結果が出ればいいけど、そうとは限らないし。時間も結構かかるかも。だいぶフラストレーションのたまる展開になるだろうから、ここからは俺に任せて」
「了解。ここらで引っ込みます」
購買の近くを通りかかったところで何となくの流れで昼食を買い込み、庭のベンチで並んで食べる羽目になった。缶コーヒーの蓋をパキッと気持ちよく音を立てて開けながら、わたしは考えた。やっとこの人がもの食うとこが見れるな。いよいよ本当に普通の生き物なのかわかるぞ。
そんなわたしの内心のわくわくを盛り上げるほどのこともなく、あっさりパンの袋を開けてごく普通に食べ始めた。が、何でメロンパン。わたしは卵サンドを咥えてしばし戸惑う。カツサンドとメロンパンがあったら普通、カツサンドが先でしょ。甘物はデザートだ!…と、思うけど。
まぁ、どっちでもいいんだけどね。
「いろいろ戸惑ったろ、大変だったな」
彼がメロンパンから先にかぶりついたこと?についてでは、ないよね。彼はわたしのきょとんとした表情を見て補足するように言った。
「彼女のこと。…まさか、接待があった方がいい、続けたいって言われるなんて思わなかったろ」
「それはまぁ。…正直、そうだね」
わたしはため息をついた。
「俳優、女優の感覚はまたスタッフ部門の人間とはずれてるからな。ああいう考え方、ゼロとは言えない。また学校側も接待される側もそういうとこにつけこんでるから、結果連中の思い通りにされてるとも言えるけど」
「…うん」
これはチャンスなんだ、ってきっぱり断言した真凛さんの美しい横顔を思い出す。本当にあんなことがチャンスやきっかけになるのかな。いいように遊ばれて終わってしまうかもしれない。それでもそこに賭けようっていうのか。
「わたしもそう思う。…それに」
何となく、食べかけの卵サンドを手で持て余しながら考え考え続ける。
「あれが本当に彼女の本心かは。…だって、理不尽にあんな目に遭って、否応なく身体を提供せざるを得なくなったら。ああでも考えて自分を納得させなきゃやってられないかも。少しでもそこから前向きな要素を見ようって適応した結果かもしれないし」
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