第3章 クローゼットの中の敵

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「…あぁっ、駄目ぇ、もう、いっちゃうよぉ…」 不本意だった筈の彼女も意外に積極的な反応だ。それがセックスってもんなのかな。わたしには経験がないからわからない。 「真凛ちゃん、すごいいいよ…、エッチな身体だね、ああ…」 二人が激しくベッドの上で絡み合うらしき声を聞きながら、わたしはまさかの貞操の危機のさなかにあった。懐の中の敵がクローゼットの中でその全容を現したのだ。 その敵とは二十歳、やりたい盛りの分別ゼロの男子学生。狭い暗い場所にAカップ女子と押し込められ、エッチな喘ぎ声を浴びるように聞かされた挙句に理性を手放した。 …もう、こんな時に! 内心舌打ちする。わたしはどうすりゃいいんだよ! 『…千百合』 殆ど声を出さずに耳に直接口をつけるようにして囁くのはいいが、そのついでに耳朶に舌を這わせるのは絶対にやめて欲しい。さしものわたしも全身がぞくっとする。 『…止めて、無理。こんなとこで』 何とか抑えた声で囁き返す。あんまり喋れない。いくら外では折しも佳境で大きな声が乱れ飛んでいたとしても。 『わかってる。…わかってるけど』 奴の手がわたしの胸を服の上から揉み始めた。後で殺す、マジで。 『ちょっとだけだから。…酷いことしないから。…な?』 な?じゃないよ。何で作業着のボタン外してTシャツの裾をベルトから引っ張り出すんだ。 『…気づかれるって!』 『大丈夫。…今、向こうもピークだから』 そう言われてついそっちに意識が向く。女の子が甘い声で叫んでいた。 「あっ、あぁんっ、いくぅ…っ!」 「ああ、いいよぉ、真凛ちゃん…!」 …そして、しばらく二人の荒い息だけ。よくわからないがどうやら『いった』らしい。 …終わりかな。 思わず身体を強張らせ、緊張するが、やがて何事かごそごそ音がした後は(後で思い当たったが、どうやら避妊具を処理していたらしい)再びおっさんが彼女にいやらしい悪戯を始めたらしき嬲るような声が始まった。どうやら一回したくらいでは彼女を放免してあげる気はないらしい。わたしは心底落胆した。 ええ、まだ、ここから出られないの…。 勘弁して。 竹田はわたしがそっちに気を取られている間にちゃっかり裾から出したTシャツの中に手を入れ、自分で買ったブラをとっくに外していた。両手で胸を覆い、直に弄る。首筋に唇を這わせ、身体を弾むように押しつけた。 『ああ、千百合。…可愛いよ…』
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