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「1900年物のワインです。一杯いかが?」
勧められても飲める気にならない。
だってそのワイン血みたいに赤いよ。
「あっそ。」
少し落胆したようにうつむく。
悪いことしたかな。
しかしその数秒後彼の機嫌は上々になり、鼻歌なんぞ歌いながらワインをグラスに注ぎだした。
「あの、間違ってなければ、あなたは吸血鬼....。」
「ああ、うん、そう。申し遅れた。私がここの屋敷の主ドラキュラ伯爵だ。」
胸を反り返らせ私を見つめる燃えるような赤い瞳におののく。
ただし彼がいるのはソファの上
そして片手に年代物のワイン
素晴らしく威厳に欠ける。
「で、なんのご用?」
舌舐めずりをしてワインの匂いを嗅ぎながら聞いてくる。
まずそれを置け
そしてこっち向け
所在なさげに立っている私が馬鹿みたいだから。
「ですから部屋を間違えてしまって....すみません、すぐ帰りますので」
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