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一瞬のうちに私を抱いた吸血鬼はソファの上に戻ってきた。
私を寝かせ上から押さえつけるようにのし掛かる。
「なかなか綺麗な子だな。」
髪に指を絡め鋤くような仕草。
「良い香りだ。」
首筋に唇を這わせながら言う。
終わりだ。
これでミイラになるまで血を抜き取られて母のように死ぬんだ。
知らぬうちに目から涙が伝う。
それに驚いたのか吸血鬼が顔を上げた。
「なぜ泣く?」
それあんたが言うのとちゃうで。
人身供養としてあんたに捧げられた方の身にもなってほしい。
「私の母は二年前、殺された。」
彼の瞳をまっすぐ見ながら最後の言葉を紡ぐ。
「亡くなった母を発見したとき、母はミイラのように血が抜かれていた。」
一滴も残らず
「どういうことかわかりますか?」
フルフルと首を横に振る。
無駄に可愛い仕草をするな。
「あなたが私の母を殺めたということです。」
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