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トランシルバニアの極寒の村は墓場のように静まり返っていた。
夜な夜な奇声と羽音が聞こえてくるたびに村人達は十字架をかざし、錠を下ろした扉にニンニクをかけた。
それが気休めだとわかっていたが。
「また上がったよ。」
「死体か」
「完全に血が抜かれていた。」
「誰だ」
「粉屋のせがれだ。」
「可哀想にな。もう花嫁も決まっていたのにな。」
奴は朝にはやってこない。
太陽の光が苦手なのだ。
「庭で発見されたんだと。」
「オヤジさんがか?」
毎朝決まってこの話題を繰り返した。
奴は冬の間のみやってくる。
凍てつくような寒い夜こそ、吸血鬼の格好の時間だというわけだ。
朝になるとミイラとなった被害者がそこかしこで発見された。
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