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すると彼は考え込むような仕草をした。
「おかしいな。そんな筈はないのだが。」
「とぼけないでくださいな。」
「うーん、おかしいな。」
顎に手を当てながら私の上から滑り落ちるように下りた。
今だ
急に痺れが取れた私はガバリと身を起こし、効くかどうかはなはだ怪しかったが男にとって大事な部分を渾身の力で蹴り上げた。
お下品で申し訳ないがここから逃げる方法を他に思い付かなかったのだ。
途端にフンギャと猫のような叫び声を上げ床にうずくまるドラキュラ伯爵。
その隙に戸に向かって駆け出した。
長い回廊を宛もなく走った。
方向感覚が分からないほど似たような部屋が続いている。
これは城から出る方が得策だ。
駆けるに駆けてようやく出口らしき石造りの扉の前に来た。
力づくで戸を開ける。
吹雪きが室内に流れ込んできた。
明らかに外の気温と合わないドレスを着ていたがそんなことを構ってられない。
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