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開いた扉の隙間から滑り込むように逃げだした。
この吹雪ではどこになにがあるのか検討もつかない。
とにかく城から離れたい一心で前に進んだ。
雪に足元を取られながらも走る。
とにかく走らなくては。
あいつが私に追い付く前に。
ああ寒くて死にそうだ。
もはや城の影も見えなくなった。
私はどこに向かってるのだろう。
逃げたところで凍え死ぬのがオチかもしれない。
こんなことなら温かい部屋で血を吸われて恍惚の表情で死んだ方が良かったな。
そんなことを思いながら力尽きて倒れた仰向けになって、降りしきる雪を見上げる。
さらば我が青春
意識が遠退く。
朦朧とする中、頭上に大きく羽ばたくコウモリを見た。
それはグングン近付いてくると、やがて私のところに着地した。
「まったく、手間のかかる子だよ。」
そう言いながら私を抱き上げる。
今度こそ本当に意識を手放した。
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