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「マジですか?」
「先代は人間に寄って消されてるからね。」
そっか、魔物にとっては人こそ敵なのだろう。
私達にとって彼らは生活を脅かす脅威でしかないけど。
気まずい沈黙。
その時、遠慮がちに戸が開けられた。
顔を覗かせたのは泣き顔だ。
「旦那様、そろそろでございます。」
「ああ、そう。」
言うなり彼が立ち上がる。
「疲れてるだろうから、君は寝ていなさい。」
「はあ」
「私は客を出迎えなければならないから。」
曖昧な笑顔で返事をした私を見て何を思ったのか行きかけた吸血鬼が戻ってきた。
「もう逃げないでおくれ。」
そう言って私の唇に小さなキスを落とした。
不意打ちに戸惑う私。
彼はフフンと微笑むととっとと部屋を出ていった。
ああ、牙さえなければ素敵な王子様なんだがなあ。
あのニョッキと生えてる犬歯のせいで悪夢さえ蘇ってしまうよ。
あーあ、とため息を吐いて脱力したようにベッドに倒れた。
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