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その頃当のエミリアはというと村唯一の酒屋で看板娘をやっていた。
今年で18歳になった彼女はいよいよ美しさに磨きがかかり、男達の視線を釘付けにしていた。
孤児ながらも仕事にありつけたのは美貌のおかげである。
さて、昼間から飲んだくれているオヤジ相手に説教を垂れていると博士が入ってきた。
「いらっしゃい」
振り向くと顔をパアッと輝かせる。
「トーマスじゃない!」
「やあエミリア、少しでれるかい?」
博士の名はトーマスといった。
エミリアとは幼馴染みだったが、彼女の母親が死んでからとんと疎遠だったのだ。
「おかみさん!ちょっと出てくるわ!」
「5分だけだよ!」
奥から不機嫌な声が返ってきた。
ペロリと舌を出し、トーマスの手を握ると表に飛び出す。
「ああやっぱり冬は駄目ね。こうも寒くちゃ立ってられないわ!」
両手をこすり合わせ息を吹き掛ける。
「お前、恐くないのか。」
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