生け贄選び

7/9
前へ
/44ページ
次へ
「恐いって?」 「吸血鬼」 一瞬の間 「なんで恐いのよ?私が怖いのは閉じ込められた空間だけ。」 遥かかなたの山を見つめながら笑う。 「ならちょうどよかった。」 トーマスの顔に影が差す。 「実に言いにくいことなんだが、今朝村長のせがれが死んだ。」 「うん、聞いた。可哀想にね。まだ小さかったのに。」 「そこに手紙が挟まっててな、その、なんというか、一人差し出せと書かれてたんだ。」 「ふーん」 特に興味もわかず石ころを蹴飛ばす。 「それには条件があってだな、その、美しい乙女でなければいけないらしい。それで会議の結果お前に....」 エミリアが顔を上げた。 「なんで」 「すまない!俺は反対したんだが、でもだめだった。」 肩を落とすトーマスに詰め寄る。 「みなしごだから?あたしが死んでも誰も文句はいわないから?」 「いやそういうわけでは、ただ美しかったからだ。」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加