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「恐いって?」
「吸血鬼」
一瞬の間
「なんで恐いのよ?私が怖いのは閉じ込められた空間だけ。」
遥かかなたの山を見つめながら笑う。
「ならちょうどよかった。」
トーマスの顔に影が差す。
「実に言いにくいことなんだが、今朝村長のせがれが死んだ。」
「うん、聞いた。可哀想にね。まだ小さかったのに。」
「そこに手紙が挟まっててな、その、なんというか、一人差し出せと書かれてたんだ。」
「ふーん」
特に興味もわかず石ころを蹴飛ばす。
「それには条件があってだな、その、美しい乙女でなければいけないらしい。それで会議の結果お前に....」
エミリアが顔を上げた。
「なんで」
「すまない!俺は反対したんだが、でもだめだった。」
肩を落とすトーマスに詰め寄る。
「みなしごだから?あたしが死んでも誰も文句はいわないから?」
「いやそういうわけでは、ただ美しかったからだ。」
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