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「美しい女なんて他にいくらでもいるじゃない!村長の娘は?パン屋の娘も、なんならうちのおかみさんとこの子は器量良しで有名なのに!」
エミリアの目に涙が溢れた。
「そっか、あの子たちは、死んだら泣く人がいるもんね。綺麗に生まれたバチがあたったのかな。」
「そんなこと言うな!ずっと言おうと思ってたんだが、俺、いつかお前のこと、嫁にしようと思ってたんだ。なのに、こんなことに....。」
トーマスも肩を震わせ泣き出した。
「トーマス....。」
エミリアを抱き締め、小さくキスをする。
泣いていたエミリアの顔にそっと笑みが出た。
それからはあっという間だった。
村のエライ人達が彼女の店に訪れた。
おかみさんに幾らか握らせると、まるで連行するようにエミリアを引っ立てて行く。
トーマスは最後までエミリアのそばにいると言い張り寄り添うように歩いた。
その日は小さな部屋に彼女を寝かせた。
錠をかけ、見張りも立てた。
逃げ出さないように。
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